先日、月の井酒造店さん、「奥播磨」下村酒造店さん合同の試飲会に参加させて頂きました。
坂本敬子さん、石川杜氏に本のサインまでいただいて、本当に忘れられない一日になりました。
お酒の美味しさはもちろんだったんですけど、その中の講演会のお話が、ずっと頭から離れません。
テーマは、「人材育成」。
どう技術を次の世代へ渡していくか、伝統ってどう受け継がれていくのか、というお話でした。
「仕事は頭で覚えるものではなく、身につけるもの」
石川杜氏の言葉が刺さります。
数字や言葉で説明できることは、もちろん大事。でも、本当に大事な部分って、そこだけでは伝えきれない。同じ場所に立って、同じ空気を吸って、師匠の背中を見ながら、自分の身体で何度も何度も試していく。
そうして初めて、じゅわっと身体に染み込んでゆくもの。
石川杜氏が麹づくりの修行について話してくださった時も、すごく胸に響きました。
説明を聞いて、見せてもらって、それでもすぐにはできない。自分の身体が思うように動かない日が続く。それでも毎日向き合い続けることで、ようやく「身についた」という感覚が分かってくる、と。
パン屋で修行を始めた時の自分、壁に激突してきた自分とリンクして共感でした。
同じ配合、同じ手順のつもりでも、小麦の状態、水温、気温も、毎日少しずつ違う。
だから、その日の生地を見て、触れて、香りを感じて、「今日はどうしたいの?」って聞き取るように向き合う。それは頭だけではできない仕事で、身体で覚えていくしかない。
もうひとつ、「自分を殺す」という言葉も残りました。
最初は少しびっくりしましたけど、お話を聞いていくうちに腑に落ちました。自分の思いを酒に一方的に押しつけるのではなく、その土地、その蔵、その年の米や水や気候を活かす。
与えられたものをどう活かすのか、そこから酒が生まれてくる、という考え方。
パンも同じです。
こちらが造りたいものを押しつけるのではなく、小麦の声を聞いて、発酵の流れを見て、生地と対話しながら、その日に生まれるものを受け取る。
「つくる」というより、「生まれてくるものに関わらせてもらう」感覚。
それをあらためて思い出させてもらいました。
先日読んだ小倉ヒラクさんの「僕たちは伝統とどう生きるか」と重なる部分がたくさんあって、聞きながら何度もうなずいていました。
伝統って、昔の形をそのまま残すことだけじゃないんだと思いました。
紙にも映像にも残せないものが、身体から身体へ、時間ごと受け渡されていく。
同じ釜の飯を食べて、何気ない会話の中にこそ、大事なことが宿っていたりする、というお話がとても印象的でした。
コスパ、タイパ、効率や正解が求められる時代に、あえて手間暇をかけること、身体で覚えること、人を育てること。
遠回りに見えるかもしれないけれど、その遠回りの中にしか、本当に受け継がれていかないものがある。
日本酒の伝統の奥にある、人の時間と、蔵の空気と、覚悟。
その一端に触れさせてもらえた気がして、胸が熱くなりました。
酒造りとパン造り、形は違っても、発酵という目に見えないものと向き合いながら、自然の力を借りて、人の手で糧を生み出していく仕事。
この日のことを、これからのパン造りに生かしていきます。
今年も月の井酒造さんの生酛仕込みの有機の日本酒「和の月(なのつき)」でStollenを作るのが、今からとても楽しみです。
月の井酒造店さん、坂本敬子さん、石川杜氏、
本当にありがとうございました!!


